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月報「ぼろ」2012年3月号より

合同婦人会「認知症って治るの?忘れる事は神様からの贈り物」

 年に一度の日曜と週日の合同婦人会が1月15日にもたれ、医師の鶴見信男さんからお話をお聞きしました。鶴見さんは老年医学会専門医で、現在、老人病院での診療をしながら、リハビリの学校でも講師をされていて、まさにこれからの私達には力強い存在であります。プロジェクターによる映像で、まず年齢と共に衰える記憶力のことから始まりました。
 人間は成長が止まったあたりから1日に10~20万個の割合で脳細胞が減っていき、50年も経つと約18億個が無くなっているということでドキッとさせられましたが、減少をおぎなう様に脳細胞は神経線維を伸ばして新しいネットワークを作り、記憶力の低下を防ぐそうです。年をとると新しい事を覚える力が低下しますが、たとえば本を読む時に黙読ではなく声に出したり、書き取ったりする等、情報が複雑に絡み合った方法をとると記憶に残り易くなるそうです。
 認知症は、新しいネットワークが出来るよりも早く神経細胞が減少する病気。早期診断は難しいが、普段の様子を注意深く観察し、一寸した異常を見つけて、早く「物忘れ外来」等で専門医の診断を受けることが必要です。記憶の一部だけではなく全部を忘れる(食事の内容だけでなく食べた事自体を忘れる)のは要注意だそうです。
 続いて本題の老人の認知症、いわゆるアルツハイマーは治るのだろうか。これには朗報があって一瞬皆の目が輝きました。
 現在、神経細胞の減少につながるアミロイド蛋白の沈着を防ぐ新しいワクチンの研究が進み、動物実験まで終わり、あと五年ぐらいで人による治験作業に入るので、もう少し頑張って下さいとのこと。またIPS細胞から神経細胞を作る実験も成功しているが、これは時間がかかるようです。
 現在多く使われているアリセプトという薬は認知症を治すことは出来ないが病気の進行を遅らすことが出来ます。最近新しい薬が開発されましたが、同じく進行を遅らせる薬です。
 薬物療法以外に、リクレーション療法(ダンスなど体を動かすことが良い)、作業療法、回想法(昔の古い生活道具や写真を見たり歌を唄ったりしながら、一緒に昔を思い出す)などが効果的です。
 女性ならお化粧をすることも大切。家の中に閉じこもらずに外にでる、気持ちが不安になるので、同じ事を何度も訊いてくるが、初めて聞いたように付き合う…などなど、このような方法で生活をサポートし、安心して生活できるようにすることで、認知症の進行を遅らせることができます。
 夕方になると極度に不安になるおばあさんは、昔台所に立って食事を作ったことを思い出させて、夕食の用意を手伝ってもらったら、認知症が消えていったという例があるそうです。その人にとって暮らしの中で心身の力が発揮できたことが安心へと繋がったのでしょう。
 家族だけでケアしていると、患者さんのしっかりしていた頃のイメージがあるので、今の認知症の状態を受け入れられないことがある。第三者のヘルパーさんを中に入れて、任せられることは他人に任せ、介護者は自分の時間と余裕を持つことも大切。「たとえ認知症であっても自分にとっては人生の先輩であるという気持ちを持つことが大切である」という最後の言葉で終わりました。
 今でもご講義を持たれている鶴見さんのゆるやかな語り口は、とてもわかり易くて、まるでリクライニングのイスに身をおいている安らぎを感じました。